なぜ信号機はLEDに変わったの?
まず答え
省エネのためだと思われがちですが、警察庁・大阪府警察・福井県警察のいずれも、 最初に挙げている理由は「疑似点灯現象の防止」です。電球式は白い光を色付きの レンズで染める構造のため、西日が当たるとレンズが反射し、点いていない灯火まで 光って見えることがありました。LED式は素子そのものが色を出すので、これが起きません。 消費電力と寿命の利点は、そのあとに挙げられています。
理由を分解する
「原因」と「目的」、確認できたことと確認できていないことを分けて示します。
電球式の信号灯器は、白い電球の光を色の付いたレンズで染めて色を作っていました。 この構造だと、正面から強い日光が入ったときにレンズ自体が反射し、点いていない灯火まで その色に光って見えます。これを疑似点灯(擬似点灯)と呼びます。
警察庁は、電球式では西日等が当たった場合に、点灯しているように見えることが ありますが、LED式ではそのような現象が防止される、と説明しています。 大阪府警察・福井県警察も同じ内容を公表しています。
LED式は素子そのものが色を出し、前面のカバーには色が付いていません。 外光が反射しても灯火の色にはならないため、点いている色だけが光ります。
電球は1個で1つの灯火をまかなうため、切れればその色は消えます。 LED式は多数の素子を並べた多重回路なので、一部が壊れても灯火全体が消えません。
福井県警察は、LED式は多重回路のため、白熱電球式のような球切れによる全滅灯が 無くなり、滅灯による交通障害が起こりにくくなっている、と説明しています。
これは疑似点灯とは別の話ですが、どちらも「見えなくなる/誤って見える」という 安全上の問題である点は共通しています。
警察庁は、LED式は電球式に比べて消費電力が6分の1程度であるため省エネルギー効果が 高く、電気料金が低減され、CO2の削減にも効果がある、としています。
福井県警察はより細かく、3色灯器では約70%、矢印灯器では約84%の省電力が図れる、 と数値を出しています。信号機は24時間動き続ける設備なので、1台あたりの差が 全国231万灯分積み上がります。
警察庁は、電球式の寿命が約半年から1年程度であるのに対し、LED式の寿命は 概ね6年から8年と見込まれる、としています。福井県警察は平均寿命を LED式 約5万時間/白熱式 約4千時間と比較しています。
電球式では年1回程度の交換が必要でした。交換のたびに高所作業と交通規制が 発生することを考えると、この差は費用だけの話ではありません。
いつからそうなった?
現在の形になるまでの経緯です。
1994
愛知県と徳島県に、車両用LED式信号灯器が初めて整備される
警察庁は、平成6年に車両用LED式信号灯器として愛知県と徳島県に整備されたと 記載しています。青色LEDの実用化が進んだ時期と重なります。
2025
全国の信号灯器の約78%がLED式に
令和7年3月末時点で、全国の信号灯器は約231万灯(車両用約126万灯・歩行者用約105万灯)。 このうちLED式は約180万灯で、全体の約77.9%にあたります(車両用約80.2%、 歩行者用約75.2%)。警察庁は「今後も引き続き整備していきます」としています。
よくある説は本当?
世間で言われている形のまま検証します。断定できないものは断定しません。
一部正しい
「LEDに変えたのは電気代を減らすためである」
省エネは、確かに公表されている理由の1つです。ただし理由の並び順が違います。
警察庁・大阪府警察・福井県警察のいずれも、最初に挙げているのは疑似点灯の防止です。 福井県警察に至っては、冒頭の紹介文が「擬似点灯が無いため西日対策に有効で、 また安全性・コストパフォーマンスに優れています」という順序になっています。
「電気代のため」だけを理由として説明すると、安全上の理由が先に来ているという 資料の構造を落としてしまいます。
根拠不足
「LEDは雪に弱いので、雪国では今も電球式が使われている」
「LED式は発熱が少ないため雪が付着しやすい」という指摘は報道などで広く見かけます。 ただし今回の調査では、これを記載した一次資料(警察庁および都道府県警察の 公開資料)を確認できませんでした。
一方で、「雪国では使われていない」という部分は資料と整合しません。警察庁は 全国のLED化率を公表したうえで、今後も引き続き整備していくと記載しています。
着雪の問題が実在するかどうかと、それが整備方針を止めているかどうかは別の話です。 本サイトでは、確認できるまで「根拠不足」と判定します。
もし電球式のままだったら?
夕方、西日が正面から差し込む向きの交差点では、赤も黄も青も同時に光って見える 状態が起こり得ました。運転者は「どれが本当に点いているのか」を、色ではなく 位置や他車の動きから推測することになります。
信号機は、一目で分かることに全ての価値がある装置です。 疑似点灯は、その前提そのものを崩す不具合でした。
色が「どこに付いているか」の違い
電球式とLED式の決定的な差は、明るさでも省エネでもなく、色を作っている場所です。
電球式は、白い光を出す電球の前に色の付いたレンズを置いて色を作っていました。 LED式は、素子そのものが赤・黄・緑の光を出し、前面のカバーには色が付いていません。
この違いが、西日が当たったときの見え方を分けます。
福井県警察は、白熱電球式ではレンズに直接色がつけてあるため、正面から日光があたると すべてが点灯しているように見えてしまう現象(擬似点灯)が生じる、と説明しています。
「疑似」と「擬似」
警察庁は「疑似点灯」、大阪府警察と福井県警察は「擬似点灯」と表記しています。 同じ現象を指しますが、公的資料でも表記が揺れています。本サイトでは引用部分は それぞれの原文どおりに記載しています。
理由の「順番」が語られていない
この疑問でいちばん誤解されやすいのは、理由の有無ではなく順序です。
LED化の説明としてよく見かけるのは「省エネだから」「長寿命だから」で、 確かにどちらも公表されている理由です。しかし警察庁・大阪府警察・福井県警察の いずれも、最初に挙げているのは疑似点灯の防止です。
| 資料 | 1番目 | 2番目 | 3番目 |
|---|---|---|---|
| 警察庁 | 疑似点灯現象の防止 | 省エネルギー効果 | 長寿命 |
| 大阪府警察 | 擬似点灯現象の防止 | 省エネルギー効果 | 長寿命 |
| 福井県警察 | 西日対策 | 安全性(球切れ) | コストパフォーマンス |
本サイトが理由に「主」「副」の重み付けを付けているのは、こうした順序を 落とさないためです。同じ事実を並べても、順序を変えると別の説明になります。
数字で見る置き換え
| 項目 | 電球式 | LED式 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 消費電力 | — | 約6分の1 | 警察庁 |
| 消費電力(3色灯器) | 70W | 約20W | 福井県警察 |
| 消費電力(矢印灯器) | — | 約11W | 福井県警察 |
| 寿命 | 約半年〜1年 | 概ね6〜8年 | 警察庁 |
| 平均寿命(時間) | 約4千時間 | 約5万時間 | 福井県警察 |
| 全国のLED化率 | — | 約77.9%(令和7年3月末) | 警察庁 |
電球式は年1回程度の交換が必要でした。交換には高所作業と交通規制が伴います。 「寿命が延びた」ことの意味は、費用だけではありません。
何が確認できて、何ができていないか
| 主張 | 状態 |
|---|---|
| 疑似点灯の防止が理由として挙げられている | 警察庁・大阪府警察・福井県警察が公表 |
| 省エネ・長寿命も理由に挙げられている | 警察庁・福井県警察が公表 |
| 球切れによる滅灯が起きにくい | 福井県警察が公表 |
| 1994年に愛知県・徳島県で最初に整備された | 警察庁が公表 |
| LEDは着雪しやすい | 確認できず(一次資料に記載を確認できなかった) |
| 雪国ではLED化を止めている | 資料と整合しない(警察庁は全国で整備継続と記載) |
「調べたが一次資料には無かった」ことも、そのまま書いています。 広く流通している説明が、必ずしも公的資料に根拠を持つとは限りません。
根拠・出典
URLの実在と、引用が本文に実在するかを機械的に検証しています。
警察庁 / 確認日 2026年8月8日
電球式では西日等が当たった場合に、点灯しているように見えることがありますが、LED式では、そのような現象が防止されます
Q9 電球式の信号灯器からLED式の信号灯器に交換しているのはなぜですか。
大阪府警察 / 確認日 2026年8月8日
電球式は、西日等が当たった場合に、点灯しているように見えることがありますが、LED式では、そのような現象が防げます